...組子ベッドが特許になるまで...
組子ベッドは、某有名百貨店からの要望で開発したもの。ベッドは桐でなくっても、と思っていたので、社交辞令と受け流してました。しかし、何度かお会いする度に、桐のベッドと言われるので、その百貨店の名前に恥じないものを作ることにしました。
とはいうものの、私自身は、畳みに布団で寝てましたから、ベッドに関しては、まったく知識なし。サイズ(寸法)も知らない。シングルとかセミとかダブルの呼び名も知らない。ベッド使うのは、ビジネスホテルのベッドくらい、桐ベッドといわれても、さっぱりとピンと来ない。困った困ったです。
それで、とりあえずネットで調べてみたら、ベッドでは桐がスノコに使わているものが山ほど。片っ端から1000点ほどみました。実店舗も展示会にも行きました。大まかな傾向は分かったものの、これらに似たものでなく、どの分類にも属さず、見かけもよく、健康効果も期待できるもの、と張り切りすぎ。でも、どうにもこうにも、アイデアは浮かばず、すぐに行き詰づまり(^^;)
そんなことが数ヶ月続いたある日、ベッドの機能とか構造をどがいししてベッドを考えたらどうかと思った。そのトタン、ヒラメキました。
ベッドに寝て、いい夢をみるには、、、、
その夢はどんな夢、、、、、、、、、、
初夢、、、、、、、、、、
一富士二鷹三なすび、、、、、
縁起のいい初夢をみるのには、『一富士、二鷹、三なすび』が書いてある絵を
枕の下にして寝るといい、、、、、、、、、、、 と、
じゃ、ベッドの床材に絵を置いたら、いやいや、それじゃ通気せいがない。木工屋として絵といえば、書院のランマ。ランマで「一富士、二鷹、三なすび」を作って敷けば、、、、。
いやいや、それでは体重でランマが壊れる。だったら下にスノコを敷いて、その上だったら。それなら壊れない。でも、細かい部分がやっぱり壊れる。だったら、組子にしたらどうだろうか?と、これが最初のヒラメキから5分でした。
それから、すぐに組子をもってきてテスト。テーブルの上に組子を置き、手のひらで押してみた。板厚3mmほどしかない組子はびくともしない。次に床において、全体重で乗ってみた。まったく問題なし。よし!!この方向だ〜〜〜となったのです。自画自賛のGoodアイデアでした。
何ヶ月もかけて、悩んで悩んで、たくさん試作してできたもの。このまま製品にして出したら、きっとマネされる。なにせ家具業界は、隣近所でもモノマネする企業が多く、それが売れると分かれば、中国で生産するメーカーもある。またたくまに粗悪品という低価格品が市場を席巻することとなる。桐箪笥では、モノマネされることを考えたことがない。マネできるならやってみ〜〜い、くらいの気構えでいたが、ベッドに関しては市場が広いので、そういうことは言っていられない。
それで特許屋さんに相談したが、意匠登録では、若干の変更で別物扱いとなるので、あまり意味ない。特許か実用新案で押さえる必要があるとのこと。それには、新しい機能(新規性)が盛り込まれている必要があるという。でも、そこんところがどこなのかは、分からない。特許屋さんに、何かこじつけでもいいから考えてといいましたが、特許屋さん困り顔。
どこが新規性となるのか?組子の部分でいいやろもんと、言っても、特許屋さん、それだけでは納得されない。何度も事務所に押しかけディスカッションしました。たいへん堅物な特許屋さんでなかなかこれで書きましょう〜とならない。いろいろ話た中で、組子にはカビが生えにくいと、いうところに注目され(何度も言ったのだが)、その部分をテストするように言われました。
それで、試験成績表を作ってくれる研究機関を探しましたが、どこもカビ発生のテストは、ルーペの上で培養してやるもので、それ以外では成績表は出せないと断られてしまいました。ガッカリ。これでアウトと思いました。
そのことを、特許屋さんに電話したら、成績表はなくてもいいですよ。再現できるようにしてやればいいですよ、と教えてもらった。それならと、大川のインテリア研究所に相談したら、温度、湿度を一定にする装置がありますよということで、2週間ばかり入れてもらうことにしました。しかし、1週間してもカビは生えず、これではうまいく行かないかも、と半分諦め。
某百貨店での催事まで残すところ5日。特許にする為には公知の事実となってはダメ。当然展示会や、ネットにも書いてダメ。特許の書類を出すまでは完全極秘と特許屋さんに強く言われてました。
カビテストのケースを研究所から、中身も見ずに箱に入れて、特許屋さんに。これでカビがうまく生えてないなら、諦めようと思ってました。そして、特許屋さんの事務所に行き、テーブルの上に並べました。
おお〜〜、凄い。組子の板厚が薄いものにはカビが生えず、厚いものにはカビがたっぷり。私も、特許屋さんも驚きました。特許屋さんが一言いいました「書きましょう〜〜」と。
それから、超特急です。図面、文章をメールでやり取り、催事の前日の深夜20時に電子出願されました。
それから1年。なん〜〜にも変化なし。そろそろじゃないですか?と電話したら、審査請求が必要ですと言われました。あれ?です。以前、桐箪笥の表面特殊加工で実用新案を出した時は、何もせず、一年ほどで実用新案になったので、特許も同じと思ってました。それで、審査請求をお願いしました。もちろん費用は発生します・
2年経ちました、そろそろと思いますが、、、と言ったら急ぎますか?だって。急ぎますよ。特許になったら、あちこち広報しまくりますから、と言ったら、早期審査請求というものがありますって。だったら早く言ってよ〜でした。
それから2ヶ月ほどして、特許屋さんからFAXで、組子ベッドの特許査定が終わった、と案内がきました。なんのことかよく分からなかったので、電話で確認したところ、「特許になったということです」と言われ、飛び上がりたいほど嬉しかったです。早速、登録料を納め、本日、特許証が届いたわけです。
組子ベッドは<特許 第4044948号>です。